小沢健二(オザケン)さんと(大)アジア主義について考えてみた!

みなさんご機嫌いかがでしょうか。今日は小沢健二(オザケン)さんとその思想についてです。

疑問
小沢健二さんとは世代は異なり、90年代にご活躍されていた頃は生では存じ上げないですが、(当時の)小難しくないのに深い歌詞と、幸せに感じさせてくれるような楽曲がすばらしいですね。最近の楽曲はspotifyで聞いているのですが、いつのまにか歌詞が少し難解になっていて、その歌詞の意味についてはかねがね気になっていました。
調べログ
たまたま、(思想家兼政治家の)松浦大悟さんの小沢健二さんに関する一連の評論をネット上で読んで気になったので、アジア主義と小沢健二さんの関係について調べてみることにしました。
余談ですが、私の記憶に間違いなければ、松浦大悟さんは政治家になられる前に現代思想の紹介ブログ「不機嫌な日常」書いてたかと思いますのでぜひ再開してほしいですね!氏の慧眼にはいつもハッとさせられますので。いつか(自民党でも旧民主党系でもなく無所属で)国政にも返り咲いてほしいです。
なお、当方は政治思想専門じゃないので、本記事の内容につき突っ込みどころ満載かなと思いますが、あくまでポエムということでお手柔らかにお願いします!

Contents

ニューアルバム『So Kakkoii 宇宙』はspotifyで無料で聴ける

ジャケットは息子さんの写真です。めちゃくちゃかわいいですね。

ニューアルバムをアマゾンで買おうと意気込んでいたのですが、spotifyで無料で聴けるのでこちらを選ぶことにしました。素晴らしい時代になったものですね。

小沢健二(オザケン)さんとは?

小沢健二
80年代後半~90年後半に活躍した日本のミュージシャン。代表曲はフリッパーズ時代の「恋とマシンガン」、スチャダラパーとコラボした「今夜はブギーバック」等。今でいうところの星野源さん。東大卒。叔父さんは指揮者の小澤征爾さん、おじいさんはアジア主義者の小澤開作さん。
東大卒のくだりについては歌詞の中でも下北沢とかよく出てきますからね。駒場東大周辺の話とか。(目の前で味の素をバンバン振りかけたラーメンを提供する)珉亭を歌詞に登場させるのはすごいですよね。情景が目に浮かぶようです。
ちなみに叔父の小澤征爾さんも満州国出身で、1970年代後半、中国の改革開放の時期に数回訪中して楽団を指揮するなど(主に文化の面での)中国との関わりは深いです。

岡崎京子さんの漫画「pink」のハルヲくんのモデル


小沢健二さんを語る上で欠かすことができないのが親友の岡崎京子さんとの関係です。岡崎京子さんは時代を代表する漫画家で、「pink」ではバブル期真っ只中の東京で資本主義と愛の関係をビビットに描写しました。

詳しくは漫画「pink」を読んでみてください。(個人的には)岡崎京子さんの最高傑作です。「リバーズエッジ」や「ヘルタースケルター」より妙な明るさがあって好みですね。

この「pink」ではヒロインの彼氏として小説家志望のハルヲくんが登場するのですが、このハルヲ君、小沢健二さんにそっくりです。漫画の隅々で出てくる大学の描写も井の頭線の駒場東大前駅ですし、安田講堂もばっちり背景にありますからね。

小沢健二さんの楽曲「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」でも岡崎京子さんとの関係は詳細に述べられていますね。

おじいさん(小澤開作さん)は(大)アジア主義の理論的支柱

アジア主義とは?

アジア主義
平たく言うと、欧米諸国に対抗するためにアジアは団結・連帯しなければならないという理論。戦前に提唱された。このアジア主義の思想にはレンジがあって、アジアの諸国を解放し純粋に欧米諸国に対抗するためという理想的側面と、日本がアジア諸国を統治するための正当性の担保という現実的側面を含む

小澤開作さんとは?

当時の満州国で歯科医として勤務しつつ、五族協和(中国の漢民族、満州系民族、モンゴル系民族、イスラム系民族、チベット系民族の各民族の平等・独立)を推進。満州国は日本の統治を推進するためのものではなく、現地の人たちの理想郷となることを切に目指していた。石原莞爾ら時代を代表するアジア主義者との交流も深かった。

現在の(少数民族には配慮しつつも実質的には漢民族中心の)中国とは少し異なる思想ですよね。当時でいうところの八紘一宇(平たく言えば、「人類みな兄弟」)とかに共通する思想なのかなと。

小沢健二さんの楽曲に残るおじいさんの面影

歌詞の「宇宙」とは(理想としての)アジア主義を指しているのかもしれない

今回のニューアルバムの中でも「彗星」はとりわけ鮮明になっていて分かりやすいのかなと。「2000年代を嘘が覆い」というフレーズは、欧米列強の価値観を日本でも取り入れようとしたけど、結局うまくいかなくて労使ともにギスギス感だけ残るようになっちゃって、最後に勝つ真実は(理想としての)アジア主義なのかなと。

そしてそれは極めて理想的なことかもしれないけど、いつの日かそれが実現するのを心待ちにしているっていうことでしょうか。

現代に蘇る(というか綿々と続いてる)アジア主義

小沢健二さん自身、長年のニューヨークでの滞在経験から、欧米のやり方をそっくりそのまま日本に当てはまるだけではうまくいかないと常々感じていて、その問いに対する答えがここ最近の曲に顕れているのかなと。(理想としてのアジア主義の)道のりは険しく、時には誤解されたり、共同幻想に流されちゃったりすることもあるかもだけど、最終的には少しずつ(理想としての)アジア主義に近づいていくのではないかなというのが答えかなと。

楽曲「フクロウの声が聞こえる」の「いつか孤高と協働が一緒にある世界へ」というのはおじいさんが目指してなしえなかった(理想としてのアジア主義の)世界(自治、独立、協和等)を小沢健二さん自身も目指していこうとする決心の顕れかなと。八紘一宇(人類みな兄弟)の復興って感じでしょうか。

グローバリズムや資本主義への違和感

小沢健二さんの最近の楽曲聞いてると、アメリカ的な資本主義や移民中心に構成されている社会(とそれがもたらす分断)についてはかなり違和感を持っているように思えます。アジア主義では五族協和を唱えているけど、おそらくアジア主義が目指しているものとグローバリズムは違うようです。私見となりますが、(理想としての)アジア主義(小沢さんの楽曲では「宇宙」)では、神の傘のもと、すべての民族の独立・平等を目指しているように思えます。つまり、戦前の八紘一宇のように、絶対的な神(のような存在)を上位に置くパターナリスティックな性格を帯びているのではないでしょうか。私もグローバリズムや資本主義には違和感を覚えています(おそらく持続可能ではないでしょう)が、小沢健二さんの現在提唱している道が果たしてよろしいかどうかは現状判断がつきません。実際、過去に実現することができなかった思想ですからね。アジア主義については、小沢健二さんのこれからの動向が気になるところです。

結局、同じ道をたどってしまうのではないかっていう危うさもありますし、未だかつて実現したことのないようなユートピア(イーハトーブ)を目指していたら行きついた先はパターナリズムが跋扈するディストピアだったってことがないようにしたいですね。

小沢健二さんの楽曲と「八紘一宇」の提唱者・田中智學や宮沢賢治との関わり

ツイッターで松浦大悟さんが指摘していたことなのですが、小沢健二さんが「八紘一宇」の提唱者・田中智學や宮沢賢治との関わりを意識して楽曲を作っているということです。こちらに私も同意していて、最近の楽曲は非常に宗教的・パターナリスティック的・かつユートピア的色彩(イーハトーブ)を帯びているというんでしょうか。「薫る(労働と学業)」のタイトルなんてまさに宮沢賢治チックですよね。

実は私は小沢健二さんの楽曲を前提知識なしで聴いたときにシュタイナー教育を想起しました。(シュタイナー教育についてはあまり知らないんですが)なんだろう、ちょっと得体の知れない神秘的な感じですね。ただ、よくよく調べてみると田中智學の国柱会であったり、それに共感していた宮沢賢治であったり、彼らへのオマージュと取れるシーンが歌詞中にもPV中にもたくさん出てきているので、小沢さんはシュタイナー教育ではなく、アジア主義にインスパイアされたのだと気づきました。「八紘一宇」はアジア主義における根幹の概念ですし、当時の代表的な思想でもあったので、宮沢賢治や小沢健二さんのおじいさんにも強い影響を与えていたわけで、小沢健二さんが今回楽曲にそれを持ち込んだのも理解できることかなと。

小沢健二さんの楽曲に強いメッセージ性が感じられるようになったのはここ最近のように感じられますのでこれからも注視していきたいですね。

ということで今日はこんな感じです!