冬目景さんの作品の特徴

みなさんご機嫌いかがでしょうか。高校から冬目景さんの作品にはまって一通りの作品を読んでおりますので、今日は私の好きな冬目景さんの作品の特徴についてご紹介します!まずは簡単に冬目景さんについてご紹介します!

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冬目景さんとは?

冬目景
多摩美の油絵学科卒の女性漫画家。代表作に『黒鉄』、『羊のうた』、『イエスタデイをうたって』等。画風はリアルで、描線は洒脱かつはっきりしていてとても個性的です。

 

絵をぱっと見ただけで冬目景さんの絵とわかるほどとても特徴的です。

冬目景さんの作品の特徴

モラトリアム

主人公が就職活動をせずに大学を卒業してもフリーターだったり、高校中退だったり、それに少し自分や周りの人が引け目を感じていたりするモラトリアムっぽい感じが作品の随所に出ています。

大学時代モラトリアムだったり、自分の身の周りにプータローがいたりして、設定が妙にリアルで親近感湧くんですよね。それと、フリーターってバブルの前あたりからリクルートが自由な生活って標榜して、ポジティブな意味あいをもって盛んに宣伝されて(今でいうフリーランスに近いイメージ)、バブル時は今のサラリーマン並に稼げたときもあったみたいだけど、いつのまにかそれが責任をもたずに正職につかないものっていうイメージに変容したものも非常に興味深いですね。短編『僕らの変拍子』はバブル崩壊直後の話になるのですが、既に今と同じようなマイナスの意味で使われていて感慨深いです笑 時代考証的にとても価値のある作品なのかなと。
該当する作品
『イエスタデイをうたって』、『僕らの変拍子』等多数

短編集『僕らの変拍子』の中の『銀色自転車』はモラトリアムの傑作なのでぜひ読んでみてくださいね。

懐古趣味

大正時代であったり、和服であったり、古い建物であったり、そういった(日常ではなかなか使ったり目にすることのない)古いものに対する愛着が作者の中で人一倍あって作品の中でも随所に出てきています。そしてその古いものが冬目景さんの画風ととてもマッチしていて素晴らしい作品を生み出しています。

該当する作品
『マホロミ』、『幻影博覧会』、『文車館来訪記』等多数
いつか大正時代や昭和を対象にスチームパンク書いてほしいです。

タバコ

冬目景さんの作品は本当にタバコ吸っている人多く出てきますよね。『イエスタデイをうたって』のはるちゃんとかリクオくんとかね。作品の随所に出てくるので今の時代にはちょっとそぐわないかもですが、それでもタバコ吸っている様はなんとも言えない情緒が出ていていい感じです。

該当する作品
『イエスタデイをうたって』等

美術部・美術予備校・美大関連(特に油絵)

作者が多摩美で油絵専攻していたということもあって、漫画の随所に美術に関する事柄が出てきます。例えば、『羊のうた』の美術部の八重樫さんとか、『ももんち』で主人公が美術系予備校に通って美大の受験を目指しているとか、『イエスタデイをうたって』の美術部の浪くんとかですね。

該当する作品
『ももんち』、『イエスタデイをうたって』、『羊のうた』等多数
作者の美術に関する思い入れや、学生時代結構楽しかったんだろうなっていうのが伝わってくる感じですね。

美術ネタは『ももんち』に最も多く掲載されているのでぜひご覧ください!

80年代カルトホラー好き

『イエスタデイをうたって』3巻でハルちゃんが湊くんから映画デートに誘われてそのタイトルが『死霊のバスケット・ケース』だったのですが、まんま『死霊のはらわた』と『バスケット・ケース』のオマージュだなって思いましたね。

バスケット・ケースはめちゃくちゃ面白いです。低予算だけどストップモーションとかを駆使しているところや人間描写の妙などは本当にすばらしいですね。また当時のニューヨークの42番街(タイムズスクエアのあたり)を舞台としているのでその時代の空気感を感じ取れていいですね

 

おくすりネタ

冬目景さん、けっこうおくすりや葉っぱネタが好きなんですよね。特に短編集は結構葉っぱネタがありますし、『羊のうた』でも薬の話は出てきますね。

該当する作品
『僕らの変拍子』、『空中庭園の人々』、『ハツカネズミの時間』、『羊のうた』など

病気・看病ネタ

病気・看病系のお話も鉄板ですね。『イエスタデイをうたって』で夭折した湧くんもそうですし、リクオもしょっちゅう風引いてますからね。『羊のうた』の一砂や千砂もそうですし、他の作品でも病弱な方、特異な持病に苦しむ方はたくさん出てきます。

該当する作品
『イエスタデイをうたって』、『羊のうた』、『ハツカネズミの時間』など

古い建築物

冬目景さんの作品では、主人公がとても古い家(『イエスタデイをうたって』のリクオやハルちゃん、『羊のうた』の千砂)に住んでいることが多いのですが、これは冬目景さん自身の趣味が反映されていて、古い建築物がお好きで見かけると記念に写真をとっているようです。

該当する作品
『マホロミ』、『アコニー』、『ももんち』、『イエスタデイをうたって』等多数

『マホロミ』見て、私も建築に興味を持つようになったのでこういった漫画が及ぼす影響は結構大きいのかなと。
冬目景さん、たぶん秀和レジデンスも好きだと思いますね。

親近者の死

絵柄的にマッチするせいか親近者の死に関する描写がとても多いですね。たとえば、『イエスタデイをうたって』の湧くん、『空電の姫君』のチアキくんや夜祈子のお母さん、『羊のうた』の千砂とそのお父さんといったように枚挙に暇がありません。

冬目景さんは人の死がもたらす叙情に頼りすぎだっていう批評(批判?)があってそれは的を得ているとは思いつつも、『ももんち』のように人が死ななくてもすばらしい作品も描けるので、今後は人の死なない漫画ももっとたくさん書いてほしいと思いますね。

該当する作品
『イエスタデイをうたって』、『羊のうた』、『空電の姫君』等多数

まれに出現する怪獣特撮

おそらくですけど、作者はB級スプラッター映画であったり、怪獣特撮がかなり好きなのかなと思います。『イエスタデイをうたって』でも作中で怪獣特撮に関連するような自主制作映画作ったり、ハルちゃんがリクオを映画に誘ったときにゴジラのパクリみたいな怪獣特撮映画だったかなとおもいますので。

該当する作品
『イエスタデイをうたって』

音楽描写

作者が音楽系の部活に一時期所属していたということもあって、音楽描写のある作品もあります。面白いのは音楽描写なのですが、たとえば沙村広明さんの漫画だと自作のポエムや歌詞がたくさん出てくるけど、冬目景さんの漫画には一切そういうのが出てこないんですよね。音楽的な擬音もほとんどなく、登場人物の表情や、場の雰囲気で表現しているのはやっぱり目を見張るものがありますね。

該当する作品
『空電の姫君』

ちなみに音楽描写を歌詞や擬音などを使わず、表情や雰囲気で表現するようになったのは(30年ほど前に週刊少年サンデーで連載されていた)上条淳士さんの『To-y』が元祖みたいです。この漫画は私の親世代に人気でその影響か私の同世代にはけっこう冬威くんがいますね。

ファンサービスがよい

冬目景さんの作品の特徴だと思うのがファンサービスの良さですよね。たとえば、木ノ下さんなんて『羊のうた』では弟が出てきて、『イエスタデイをうたって』では妹とバンドマンの兄がでてきますからね。陸続きの世界観ってなんだか親近感がわいていいですよね。『ももんち』でも、主人公ももねちゃんの友達として、『イエスタデイをうたって』の中原さんが出てきますからね。

ファンと向き合うことも大事にしていて、同人誌も数年に一度発行されています。同人誌を買うと来年はこの作品が復活などファン向けの情報が盛りだくさんで書かれていて素晴らしいですね。

執筆が遅いという方方からの指摘についても、単行本の巻末などで真摯に謝罪して実際に作品を続々と完結されているので、ファンの声を汲み取っているのかなと思います。独自の作風ということもあって、時には筆の進まないこともあるかとは思いますが、作品を完結させるという意思がおありなので、時間はいくらかかってもいいのですばらしい作品を作り上げていただきたいなと。出た作品は必ず購入します!

該当する作品
『イエスタデイをうたって』、『羊のうた』、『ももんち』

まれに出現する怪しくてかわいいメカ

『黒鉄』の主人公、鋼の迅鉄の仕込み武器であったり、短編『田中02』の主人公のお父さんが作った怪しいメカであったり、『ZERO』の掃除ロボ、警備ロボ(『魁!!クロマティ高校』のメカ沢にそっくり)であったり、たまにメカが出てくると怪しいんだけどけっこうかわいいのでああいうメカ出してくれるといいですね。

該当する作品
『黒鉄』、『田中02』、『ZERO』等
余談ですが、『ZERO』は昔のB級スプラッターもので、当時の冬目景さんはかなりとがっていることを知れておすすめですね。アクションシーンそのものよりも、作者はB級スプラッター映画好きなんだなって如実に伝わってきます。

 

短編集が長編より面白い

短編集が長編よりも面白い事が多いんですよね。どうしても長期連載だと間延びしてしまうので(それはそれで日常感、ふわふわ感が演出できていてとてもここちよくはあって好きなのですが)、やっぱり短編の方が密度が濃いっていう気がしますね。

やっぱり自分がおすすめなのは、1巻完結の『ももんち』であったり、短編『僕らの変拍子』中の『六畳劇場』や『銀色自転車』(イエスタデイをうたっての原型のような話)ですね。

『六畳劇場』や『銀色自転車』は今見ても冬目景さんの傑作ですね。
該当する作品
『僕らの変拍子』、『空中庭園の人々』、『ももんち』

高橋留美子さんインスパイア

『イエスタデイをうたって』を見ていて思ったのですが、これはかなり高橋留美子さんの『めぞん一刻』に影響を受けているのかなと思うんですよね。『めぞん一刻』の管理人さんは未亡人ですが、『イエスタデイをうたって』の榀子先生も幼馴染を失っていることと、遅々として展開が進まなかった(けど雰囲気心地よい)感じで、どんどん新キャラが出ていくようなところがかなり高橋留美子さんにインスパイアされているのかなと。それと高校生〜大学生あたりの思春期の男女がよく出てくるのも高橋留美子産の特徴ですね。

『イエスタデイをうたって』の11巻巻末インタビューを見ていたらなぜ恋敵が年下の浪くんなんですかっていう指摘があって、恋敵が年上、裕福な人が多かったので、あえて年下にしたとの回答があります。たとえば、高橋留美子さんの『めぞん一刻』では恋敵が年上、イケメン、裕福な三鷹さんですのでそういった王道ラブコメからのずらしっていうのも冬目景さんの中で意識されているのではないでしょうか。

今後こういった作品が見たいです!

松任谷由実さんがデビュー直後は主に若年層向けの恋愛であったり、身の回りのことを中心に歌っていたけど、その後は(春よ来いであったり、時空のダンスであったり)大人向けのより広い方向性にシフトしたように、冬目景さんにもそういったこれまで扱ってこなかったような方向性に挑戦していただきたいなという思いはあります。

精神的にちょっとふわふわしている10代後半-20代中ばの女の子を中心に描くだけでなく、やっぱり年齢を重ねていくからこそ感じるようになったことってあると思いますし、積み上げてきた知見もおありかなと思いますので、そういった30代-40代を主人公とした作品っていうのもぜひ見たいなとは思います!高学歴ワーキングプアとか氷河期世代向けのものももっと見てみたいなと。

短編でも差し支えございませんので、そういった作品を一つでもみたいです!空電(ノイズ)の姫君でミュージシャンのお父さんが出てきていてこれまでの作品より40代の出番があるのかなと思いますがそういった作品をこれからどんどん増やしてほしいですね!

ということで今日はこんな感じです!

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