【感想】『イエスタデイをうたって afterword』読了したなど

みなさんご機嫌いかがでしょうか。『イエスタデイをうたって afterwords』がこの度発売されたということもあって、早速購入して読んでみましたのでその感想を述べたいと思います。

結末、セリフ、画像等の直接的な言及は避けますが、それでも若干の内容のネタバレを含んでおりますのでまだ作品を読んでいない方は予めお含みおきいただけますと幸いです。

まずは簡単に『イエスタデイをうたって』についてご紹介したいと思います。

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イエスタデイをうたってとは?

イエスタデイをうたって
冬目景さんによる青春群像劇。フリーター、高校中退等モラトリアム期にあるキャラクターが多く登場し徐々に成長する様子を描く。90年代後半〜00年代前半の雰囲気が色濃く出ている。

全11巻ですが、初めの1〜4巻と最終巻11巻を見ればあらかたの内容をつかめるかと思います。(もっと短縮したいと思う方は1巻、4巻、11巻だけ読めば大丈夫かと。)個人的には4巻が一番おすすめです。

高校の時に読み始めて(当時は5巻までしか確か出ていなかった)めちゃくちゃはまりました。それから、『僕らの変拍子』であったり、『黒鉄』など冬目景さんの本を片っ端から集めるようになりました。冬目景さんの最高傑作は『僕らの変拍子』の中の短編、『銀色自転車』かなと思いますので皆様もぜひご覧ください。

大半の内容は『イエスタデイをうたって EX〜原点を訪ねて 冬目景 初期短編集〜』と同じだった

今回ちょっとがっかりだったのは今回のafterwordの大半の内容は10年程前に発売された『イエスタデイをうたってEX〜原点を訪ねて 冬目景 初期短編集〜』とほぼ同じでしたね。(イエスタデイをうたって番外編 其の壱、其の弐、其の参、其の四、田中02、サイレントです。)180頁中90頁近くがEXのものをそのまま載せているのでこのやり方はどうかなと思ったわけです笑

とはいえ、冬目景さんには熱心な固定ファンがいらっしゃるので私も含めてファンブック的な色彩が強い本書であってもやはり購入するのかなとは思いますが。

イエスタデイをうたって特別編はとてもよかった

事前にグランドジャンプでも掲載された内容で、私はグランドジャンプでも読んでいた(つまり二度同じ作品を購入した)のですが完結した作品のその後がかいまみれるのでよかったですね。特に原作11巻の最終話では、リクオとハルのその後は伝聞形式で語られただけで本人たちは出てこなかったことから、今回の特別編で仲睦まじい様子が描かれているのは見ているこっちも楽しくなりますね。

 

思うに、冬目景さんは作品の結末書く際にベタなハッピーエンドにせずに、わざと少し外した感じの余韻を残させる書き方を好むんですよね。

特別編の内容はというとリクオとハルをメインにストーリーが進んでいって、同棲はしていないものの少しずつ距離が縮まっている感が出ています。今回の特別編はリクオとハルの関係性の進展を軸に描いていて、今後もさらに進展するのかなって感じの終わり方でしたね。本当に冬目景さんは余韻を書くのがうまいです。

原作の最終話でも余韻を残すような終わり方をしてその後は二度と読むことができないと思っていただけに、こういった形で読めるのはすばらしいです。一つ気になることといえば、浪くんと榀子先生のその後が特別編でも全く出てこなかったのですが、うまくやれているのでしょうか。。 個人的に榀子先生はまだ過去を踏ん切れていない気がするのですが。。結局、浪くんに対してもやっぱり違う、私は一生亡き湧くんを想い続ける的な展開になるのではないかなと。亡き湧くんをずっと想い続けると決断すると浪くんにとってはバッドエンドですが、そのあたりは特別編では一切ないです。

思うに、原作やアニメでよく出てきた榀子先生と桜の木が一緒に描かれているシーンですが、それは桜を金沢で片思いしていた今は亡き湧くんに重ね合わせていて、この桜の木ってのは亡き湧くんに対する思いと決意だったり、成長した(弟の)浪くんを湧くんと重ね合わせているなど様々なことに榀子先生の中でつながっていて、とても余韻を感じさせれたのですがと思いますので、特別編でこの桜と榀子先生と浪くん出しちゃうと余韻ぶちこわしになっちゃって野暮だからあえて出さなかったのかもと思っちゃうんですよね。

ハルちゃんは『アメリ』のオマージュではなかった

ちょっと話は脱線するのですが、afterword読んででふと思い立ったことを書きたいと思います。10年以上前に初めて『イエスタデイをうたって』を読んだ時にハルちゃん(含む冬目景作品に出てくるエキセントリックな女の子(『空電の姫君』の夜祈子等)全般)は『アメリ』のオマージュなのかな(髪型とか?)って思い込んでいたんですが、翌々考えてみると『イエスタデイをうたって』は1998年連載開始、『アメリ』は2001年放映なので全然オマージュじゃなかったですね笑 てか映画のパッケージ見てるとハルちゃんと全然似てなかったです笑 アメリのパッケージってどっちかっていうとMr.ビーンとかその系統に近いですね笑

冬目景さんの作品、ちょっと暗い感じとかフランス受けしそうですよね。逆にアメリカとは相性悪そうですが。。

『夏の姉』は本作の中で一番よかった

若干ネタバレになるのですが、あらすじを簡単に述べると大学に上京した兄がその夏、実家に女装して帰ってきて昔の同級生をたぶらかそう(思いを告げよう)とする話です。詳しくは購入して読んでみてください。

冬目景さんの作品の中では珍しく現代感のある作品でしたので新鮮でしたね。この読み切りですが、新作の読み切りかと思っていましたが2015年に掲載されていて単行本未収録なだけでした。『空電ノイズの姫君』でもお母さんがよそに男を作って海外にいっちゃって主人公の女の子・磨音がお父さんに育てられるって話ですし、もう一人の主人公・夜祈子は高校生なのにオカマバーでよなよなバイトしていたりして、この『夏の姉』とあわせると2010年代後半に作者の中でジェンダーに関してなにか思うことがあったというのは間違いないでしょう。

ということで今日はこんな感じです!

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